NavyTern’s blog

思考の試行。

孤独が辛い人へ

拝啓、孤独が辛くなってきたあなたへ

私がこの手紙を書こうと思ったのは、今日電車の中である女の子を見て、ああそうかと思ったからです。その女の子はつまはじきされていました。別な二人の女の子はひそひそと厭な感じでした。たった三人しかいないのに、私には孤独が見えました。

孤独というのは、独りぼっちということです。誰かと一緒にいたいのに、それができないということです。それはそれは寂しくて、悲しくて、苦しいものです。もし今あなたが孤独の真っただ中にいるのなら、その辛さは言葉に表しようのないものかもしれません。

でも、考えて下さい。あなたを孤独にさせる誰かは、本当に一緒にいたい人ですか。かけがえないのない人ですか。それがかけがえのない人であれば、あなたは我慢しなければなりません。泣きながら笑わなければならないかもしれません。それでもあなたは我慢して頑張らなければなりません。

問題は、それがかけがえのない人ではなかった場合です。
人は群れるのが好きです。大好きです。なぜでしょう。
群れていれば安全だと錯覚するからです。自分で自分の責任を取らなくてもよいからです。もし危ない目に遭っても、道連れができると安堵するからです。そうして群れの中で生きている人間は、バカ者でございます。群れている人間全てがバカ者ではありません。群れていないと生きていけない人間がバカ者でございます。

孤独なあなたは、今崖っぷちに立たされているかもしれません。バカ者たちに追い立てられ、居場所がないと感じているかもしれません。バカ者は誰かを責めていないと自分を守れないのです。どうぞ、後ろを振り返って下さい。そこにはどこまで続くのか分からない奈落が見えます。もっと眼を凝らして下さい。あなたには見えるはずです。バカ者たちには霞んでよく見えない奈落の先が、あなたにははっきりと見えるはずです。

奈落の底に大地が広がっています。無限に広がっています。少しだけでいいのです。勇気を出して、奈落に飛び込んで下さい。どん底まで落ちれば、そこには土があります。そこから前を向いて歩いて下さい。ずっと先まで歩いて下さい。そこにあなたを待っている人がいます。あなたと同じように、大地を進んできた人たちがいます。そこがあなたの居場所になるかもしれないし、他に居場所を探してもっと先まで進みたいと思うこともあるかもしれません。いずれにせよ、その頃にはあなたは孤独を好きになっているはずです。誰かと一緒にいることが、どんなに幸せで楽しいことか、全身を以て理解するはずです。

崖っぷちのあなたにこの手紙が届くでしょうか。あなたの勇気になるでしょうか。バカ者たちには奈落の先が見えません。奈落しか見えていません。だから恐れるのです。狭い狭い崖の上で、必死に自分の居場所を作ろうともがくのです。でも、あなたは広がる大地を知っています。崖の上でバカ者たちのために涙を流すことはありません。同じ涙なら、大地に芽吹く木々に与えて下さい。木々はあなたに恵みをもたらします。雨風からあなたを守ります。月夜の晩に静かにあなたに寄り添います。

あなたにこの手紙が届くでしょうか。届くことを願います。勇気になることを祈ります。
どうぞあなたはバカ者にならないでください。少しでいいのです、勇気を出して大地を目指して下さい。
その先に必ずあなたを待つ人がいます。


つまはじきされた女の子は、電車のドアが開いた瞬間、キッと上を向いて走って行きました。その背中は実に逞しく、心強いものでした。

敬具