NavyTern’s blog

思考の試行。

リーダーになるということ

次回予告をしてから随分と時間が経った上に、間にいくつも記事を書いてしまって、指摘を受けたりしております。ネパールの4年間をまとめるのは、かなりしんどい作業です。滞在は1カ月だけど、濃いんだもの。

ということで、今日は僕が3年生になり、リーダーになったお話。

リーダーというと大仰だけど、信じられないくらい自由人が集まるサークルには一人くらいまとめる人間がいないと崩壊してしまうのです。そんな癖者ぞろいのサークルで僕が目指したのは「等身大のリーダー」でした。

僕が入学から見てきた先輩たちの背中はそれぞれが違って見えていた。大きい背中もあったし、強い背中、優しい背中もあった。頼りない背中もあればひょいひょい先へ進んでいく背中もあった。でもそのどれもが、僕には憧れだけどとても遠い存在で、一生懸命追いつこうともがいていた。一生懸命、その先輩になろうとしていた。

でも、もがけばもがくほど、それが不可能だし意味のないことだと気づいた。当たり前だ。自分は自分で、誰かになることはできない。そのように頭が冷めたころ、ふと「ああそうか、後輩はこんな自分の背中を見るのか」と思った。後輩たちがどんなふうに僕を見ていたかはわからないし、別に知ったところで何も変わらないのだけれど、「あいつ最低な先輩だったな」という状況は避けねばなるまい。ましてやリーダー、情けない後ろ姿は見せられない。さて、どうしようと考えた末「自分だったら、居丈高にならない人について行きたい」と思った。だから等身大を目指した。

もちろんリーダーの仕事をする上では強く言わなきゃいけないこともあるし、僕に言われなくても後輩自身が気づかなければならないこともある。さらにリーダーと言えど上には4年生がいて、何より1人のメンバーでいたい。サークル存続のために、安全面・金銭面・現地やOBOGとの連携、本当に色んな事を考えて一つ一つ実行していった。中には上手くできなかったり頓挫してしまったものもある。やりたい企画はたくさんあったけど、1人で突っ走らないように、みんなで決めたことができるように歩調に気をつけていた。

リーダーの業務をする中で2つの収穫があった。
1つは、自分がリーダーであることがあんまり向いてないなということ。「~長」みたいな役職は小学校等からこなしてきていたから、能力としてはできる。でも、僕は決定的に心配性だったし、多少人に嫌われても目の前のやるべきことを実行したいタイプだと気づいた。ナンバー2のタイプ。仕事できるけど嫌なやつね。
自由人というのは裏を返せば、何でも自分で出来る人たちなのだけれど、「あの人はちゃんと時間通りに来るのかな」、「あの子はあれをちゃんと持ったかな」と心配でたまらなかった。はじめてのお使いのお母さんの気持ち、疑似体験。あとは、何も協力しないくせに邪魔ばっかりする人にすごいイラついてたね。時間が経って、その人もありがたかったなと考えられるようになれたけどさ。今もだけど、青かったです。

もう一つの収穫は、「運営」に没頭するあまり、「現場」を顧みないようになっていた自分に気づけたこと。
僕がリーダーになった年は例年より人数が多くて、日程調整も複雑になっていた。あらゆる先手を打ちまくり、万が一があっても対応できるようにしたつもりだったから、無事に全員が現地で合流できたときは本当に安堵した。
同時に、ご飯を食べて、砂を運んで、トイレは地球の終わりみたいに汚くて、夜は月明かりが眩しくて、川の流れる音だけがするベンチに座って語らう、そういう当たり前のことを僕はちゃんとやってないと気づいた。
「楽しいこと、やろう」を忘れていた。それはある晩に、じいさん(現地NGOの翁。英・中国・日本語が使える)と話していた時に気付いたのだ。僕はリーダーとしてきちんと働けているか、足りないことはないか、この先自分がいなくなった後この団体をどう導けばよいのか。もうみんなが寝た後だったから、質問しまくった。

「リーダーは孤独だ」というのはいつの時代も言われることだけど、リーダーはどれだけ頑張ろうと誰も褒めてはくれないし、「お前がやってることは正しいぞ」と言ってくれない。自分を信じて働くしかない。でも、それがリーダーとしての役割であり責任だし、そういう弱い姿をメンバーには見せないのもリーダーの仕事かなと思っていた。内心めっちゃ不安だったけどね。

じいさんは「Just advise」と言った。何もしなくていい、アドバイスするだけでいい、と言った。
じいさんはそれ以上は何も語らなかった。眠かったよねごめん。でも、その言葉だけで十分だ。アドバイスするためには、自分が何かしらの経験を積んでいなければとてもできるものじゃない。それも先輩を見て学んできたことだ。
「楽しくなければ生きてる意味なんてない」。どっかの本で読んだ一文。「明日は砂運び楽しもう」と思って寝た。

100見聞きして、10考えに考えて、実行できたのは1つか2つだ。僕がやった仕事が、今後後輩たちによってどういう風に扱われるのかはわからない。そこから先は後輩たちの仕事だし、僕はJust adviseだ。

「リーダーかくあるべし」を語りだすと、碌なことにならないなと感じていたから、リーダーを終えるまでこういうことをまとめようとは思わなかった。今回まとめた(全然まとまってない)のは、僕が実際に経験の中から感じたり気付いたりしたことだから、ビジネス書のコーナーによく置いてあるような本を読んだ方が面白いのかもしれない。

ネパールにおいてリーダーがやらなきゃいけないことは、実務的に話せば「絶対に体調を崩さないこと」。よしんば崩しても「3時間以内に復活する」こと。大事なのは回復力の高さです。自分さえ健康ならメンバー助けられるからね。

リーダーなんかやると、考えたことたくさんあるし、言いたいこともわーっとつい書いてしまったのだけど、不毛な愚痴を黙って聞いてくれる人とか、ダメになりそうな時に代わりに仕事やってくれる人とか、そういう人のありがたさを一番理解できるのもリーダーの特権なのかもなあ。


次回、「じいさん、夏が終わるよ」。